両雄 衝突

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■夕菜 2幕目 うぅ・・、 やはり話しかける しかないのか!? いや、待てよ? この教科書を 私が ちょうだいして、 彼が私の教科書を 持っていけば 丸く収まるのでは? いや、やっぱりダメだ。 一時しのぎの 策にしか過ぎない。 彼はきっと私の名前に 気がつき教科書を 返しにくるだろう。 ええぃ、南無三!! 私は意を決して口を開く。 「あのぅ・・」 虚しい時間が刻々と過ぎた。 返答無し・・? 無視・・か。 ナメてんの? コイツ。 私の胸の奥底から 沸々と湧き上がる 怒りの感情。 理性を抑えるリミッターが 解除され、 野生とバイオレンスな エナジーが私を包む・・ 『チェストォォォ!』 私は心の中で叫ぶと、 教科書の角を 彼の頭におもいきり 叩き込む! 『ゴツッ』と、鈍い音が 乾いた廊下に響き渡る。 どうよ! 思い知った!? 「な、なんだ!?」 彼はこう叫びながら 目をバチっと開けると、 周りをキョロキョロと 見渡し、 やがて私と目が合う。 「その教科書、  私のなんだけど?  返してくれないかな!?」 彼と見つめたまま、 数秒・・いや、数分? 何故だ・・ 何故、何も喋らない!? 何を企んでいるんだ!? と、その時、 彼は いきなり 私に背を向けると 階段に向かい走り出した。 な・・! 行動が読めない! 「おい、ちょっと待て!  どこいくんだ!」 思わず、荒々しい口調に なってしまう、私。 そして、彼は走り去りながら 私に「ごめん!」 と、一言叫ぶ。 何が、ごめんだ・・! とっとと 私の教科書返しやがれ! 私は彼の後を追い、 階段を駆け上る。 奴は屋上・・か? 屋上に近づくにつれ、 彼の息遣いが聞こえた・・ 彼がいると思われる 推定位置まで あと、10歩・・ あと、5歩・・ あと、3歩・・ ピュアメイカーめ・・ ピュアメイカーめぇ!!!
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