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■夕菜 3幕目
彼の荒い息遣いが
屋上への扉ごしに聞こえた。
恐る恐る ドアノブを握り
様子を伺いながら
ゆっくりと開ける。
扉を30センチほど
奥へと押し込んだ時点で
向こう側にいる
彼と目が合った・・
思わず、
扉を閉じようとしたが
勇気を振り絞り、
そのまま現状の行動を
維持する・・
彼の体全体が
目視できた その時、
突如、彼は私に向かって
手を合わす。
なんだ? 何が起こる!?
「ご、ごめん!
本当にごめんね!」
彼は私を妖怪でも
見るかのごとく真っ青な
顔をして、
ごめんねと繰り返した。
いやいや、
何故、謝罪するんだ?
意味がわからない・・
ただ単に私は
そのアナタの手中にある
教科書を
返してほしいだけだ。
まさか、
返還する意思は無いのか?
それならば
そうと言ってくれればいい。
私はアナタの教科書を
自分の物にするだけだ・・
その時、
私の背中に強烈な
プレッシャーを感じ、
私の野生の勘が
かつて無い危険を予知した。
何だ・・!?
何が来る!?
私の後ろに何がある?
私は振り向かなければ
いけない衝動に
止め処も無く駆られ、
臨戦態勢のまま
体を後方へと転換させる。
うげ!! 本多先生!
「おい! お前ら、
何をやってるんだ!
もうとっくに
授業始まってるぞ!」
本多先生の頭から
鬼のツノらしきものが
見える・・
ヤバい・・これは、女でも
殴られるコースの可能性。
まさしく、
前門の虎・・後門の狼・・
あれ?逆か?
前門の狼? 後門の竜?
あ、あれれ?
い、いや そんな
ことわざなんて
どうでもいい!!
どう
この状況を切り抜ける!?
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