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■夕菜 4幕目
本田先生は
まさしく鬼の形相で
素早く手を伸ばすと
私の腕を掴んできた。
痛い・・離してよ!
必死に振りほどこうと
何度も腕を動かす。
「おい!なんとかいえ!」
私は、
彼の勢いと腕の痛みで
何か言おうにも、
言えなかった。
そして、業を煮やした彼は
実力行使へと踏み切る。
正義と書かれる拳は
高々と天へと昇り
今まさに 私を粛清しようと
ギロチンの刃のごとく
私に振り落とされる。
生まれて初めて殴られる!
私は目を閉じ、
その一瞬を待つ。
早く来い!
来るなら来い!
やがて、数秒の時。
・・・あれ?
私はゆっくりと視界を開く。
本田先生の腕を
鷲掴みにする藤堂隆人の手。
状況を把握するのに約3秒。
う、嘘!?
ピュアメイカーが
私を助けた!?
「お、おまえ!
先生に逆らうのか!?」
「あ、いやぁ・・
体が勝手に・・!」
ピュアメイカーは
真っ青な顔をして、
言い訳を放つ。
彼も・・怖かったんだな。
その時、私の中で
何かがグラグラと揺れる・・
瞬時にそれは彼への
恋心だと理解する。
マズい・・惚れたか?
いや、まだだ!
まだ惚れてない!!
私は
そう言い聞かせながら、
胸から溢れ出る想いを
必死に食い止める。
やがて、ピュアメイカーは
ガクガクと震える足で
本田先生に向かい
こう言う。
「ぼ、僕のせいっス・・
彼女は関係ないですから。
僕が無理矢理、
彼女をここまで連れてきて
引き止めたんです」
ダメだ・・惚れた・・
刹那、私の頭の中で
全ての思考能力は
完全に停止し
目の前は真っ白になった。
気がつくと、
ピュアメイカーが
本田先生に殴られながら
倒れこむ場面と遭遇する。
彼が地面にベッタリと
はいつくばると、
本田先生は
「早く教室に戻れ・・」
などと言い、
その場から去った。
私の目から
涙が零れ落ちてることに
気がつく。
彼の元に駆け寄り、
私は座り込んだ。
私のために・・
何故・・?
いや、
理由なんかないんだろう。
彼はこういう人なんだ・・
そう、それこそが
ピュアメイカーと
呼ばれる所以・・
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