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人生には三回ほどモテ期というものがあるらしい。
それを聞いたのは彼氏が出来た後だったので、軽く聞き流していたのだが……。
「相澤さん、俺と付き合って下さい」
「……ふぇ?」
これ、どこに? とか言ってもいいんだろうか。
気温も上がってきた6月、朝練後のことだった。
あまりにも暑かったので、体育館の脇にある水飲み場で頭から水をかけて、がしがしやってたところに来たのが、男子剣道部の部長井上君だった。
互いに三年生が引退して部長になったばかり、慣れないなりに頑張っているところでシンパシーを感じてはいたのだが、まさか告白されるとは思ってもみなかった。
「一年の時から気になってたんだ。でも、高橋と付き合っちゃったし、今迄話す機会がなかったからさ……」
「あー、高橋……ね」
そういやそんなこともあったっけ。佐伯さんにはフラれたらしいけど、何でかその妹と付き合うことになったらしいとかなんとか聞いたような気がする。
今更だから、どーでもいいけど。
うちの男子剣道部は女子と違って強豪だし、皆それなりに格好いいと評判である。
その中でも、井上君は一番人気がある。
そんな人に告白されている。
何かのドッキリだったりしないだろうか。
そこまで思ったけど、この照れ臭そうな態度が演技だったら、井上君は剣道部ではなく演劇部に入った方がいい。
「……ごめん、私、今は遠距離の彼氏がいるんだ。だから、井上君とは付き合えない」
いつ会えるかわかんないけどね。
「……そっか、……あー俺タイミング悪い、高橋に持ってかれる前にコクっときゃ良かった!」
そう言ってがっくりとしゃがみ込んだ井上君。
「そうだよなー、相澤さんて結構人気あるもんなー、俺じゃなくても誰かしら見る目のある奴はコクるよな……」
「え? 人気なんてないよ?」
「相澤さんが知らないだけで、後輩から慕われてるし、ちょっと悪い奴らからも一目置かれてるし」
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