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今期の見習いの中でも特に秀でていると噂されている二人は、かなり扱い難い人となりをしている様子だった。
片方はそこそこ、どこの団でもやっていけるに違いないが、もう一人は多分に厄介者扱いされるだろう。
率直過ぎるが故に。
「さっきの話だがな、手合わせ、試合等という観点においては、私はどこの団の長よりも弱い自信があるぞ」
仮に、ここに他の隊の者がいたなら、自慢にもならない事柄を自信満々に、しかも見習いである彼らに平気で言えるシュナイダー卿の神経を疑うところだ。
勿論質問者である彼も、顔をしかめた。
しかし、片割れの方は、シュナイダー卿の真意を探るかのように、じっと黙っている。
「大体な、そんなお遊びで実力を計ろうとするほうが間違っているだろう?」
「遊び……ですか?」
「そうだ」
子供に諭すような調子で話すシュナイダー卿に、彼は目を丸くした。
「逆にお前達、殺す気でやってない相手に、『どうやって本気を出せばいいのか』私に教えてくれないか?」
彼が答えを得る為には、当分、いや、相当の時間を経て、それでも正確な解答は出ないかもしれない。
ややあって、真面目に考え込んでしまった彼ではなく、片割れの方がのんびりと返した。
「難しい質問ですねー、人生経験の浅い俺らにゃ答えられませんよー。人が悪いなぁ」
人の良さそうな顔して、的確に内容を把握しているお前はなんなんだ。
そう思ったものの、敢えて口に上らせることはせず、シュナイダー卿は(やはり要注意人物だ)と頭の片隅にメモをしておいた。
「さて、お前達! 練習だけでは退屈だろう? 私に一太刀でも入れられたら、『黄金の剣』に推薦してやるぞ!」
一般的に黄金の剣師団は、陛下直属の師団というだけあって、見習いだけでなく、他の隊所属の騎士達でも憧れる花形職なのだ。
その周囲には二~三十人の見習いが稽古の最中だった訳だが、シュナイダー卿の発言で俄かにざわめき立った。
「本当ですか!?」
「ぶちのめしてもいいんですね?」
そんな騒々しい中、シュナイダー卿は出来るならやってみろと内心で呟いた。
確かに人の悪いことをしているという自覚がシュナイダー卿にはあった。が、しかし。
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