邂逅

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一瞬とも永遠にも感じる時間。 (来る……!) 先に動いたのは、ロシュの方からだった。 迅速、烈風の如し。 しかし、それに対応出来ないシュナイダー卿ではない。 速いと思うよりも先に、経験から、体は最善の方向へ動く。 ギィィン! 激しい金属音が一面に響き渡る程、重い一撃だった。 彼がシュナイダー卿を本気で仕留める気だったのは明らかである。これこそシュナイダー卿が望んでいた展開だ。 末恐ろしい才能とでも言うべきか。まだ我流の域を出ないが、ちゃんとした指導さえすればもっと伸びるだろう。 (ただの恐れ知らずか、それとも本物か……。これまた楽しみだな) しかしながら、経験の差というのは如何ともし難く、渾身の一撃とも言うべきそれを受け止められた彼は、簡単に……と言えば語弊があるが……弾かれて、剣は背後へと飛んで行ってしまった。 喉元に突き付けられた剣を、悔しそうに見やってから、ロシュは「参りました」とシュナイダー卿に告げた。 「やっぱ隊長殿って強いなー。ルピリアと体術ならともかく、俺、剣じゃ全然無理」 ルークがまるっきり人事のように呟く隣で、ロシュはずっと眉を寄せていた。 『不機嫌』を全身で体現しているようなその姿に、ルークは軽く溜め息を吐いた。 「何だよ、隊長殿に勝てると思ってたのか?」 「……相手の技量も分からない程、オレは馬鹿じゃないつもりだ」 「こらこら、そういうことは人のいないとこで言えっての」 周囲に喧嘩を売るようなロシュの発言に、シュナイダー卿は苦笑した。もう少し周りに気を使うように教えてやらなければなるまい。 友人同士のやり取りは微笑ましいものだ。 しかし、唐突にロシュはシュナイダー卿を振り返ると、「本気では無かったでしょう」と噛みついてきた。 ロシュの一言で、心外だと言わんばかりに、シュナイダー卿は目を瞠る。 「今出来るだけの本気を込めたぞ」 そう、今出来るだけの……。 答えが不服だったのか、ロシュの表情が険しくなる。 「オレでは隊長殿の相手にもなりませんか」 「……私が本気を出すというのが、どういうことだか理解しているのか」 本気即ち。 相手を必ず殺す。または、死に追いやるということ。
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