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後々のことを考えて、賢明にも彼は本音を押さえた。
――と同時に。
「……ほら、いるだろ、ラルコッタ」
影からそっと様子を見守る二人組。言わずもがな、シュナイダーとローザである。
「あちゃー……」
しくじったとローザが顔をしかめた。
「あの抜け穴、今日見つかっちゃったんだよ。修理するまであいつがいるって……」
「よりによって……ラルコッタ……」
「……性格はともかく、腕は確かだからね、あの腐れ外道」
本当に殺す気でいかないと無理だ。そう冷たく呟いた幼馴染みに、ローザは何とも言えない顔になった。
「……早まっちゃ駄目だからね?」
「大丈夫、切り刻んで魚の餌にしてやるのは今じゃない」
――十数年後、この言葉を実行しようと考えて、優奈に止められるシュナイダーであった。
「どうしよう、他に回る時間はないし……」
ラルコッタだけならまだしも……と口にしたローザに、シュナイダーが閃いた。
「……上手くいくように祈ってて」
ガサガサッ
少し離れた茂みから、異音。
「む、何だ今の音は」
「ちょっと見て来ます」
いろんな意味で危ない上司から離れられるのが幸いとばかりに、彼は茂みの方へと歩を進める。
こんな人気のないところにいるのは、精々サマリー(兎のような小動物)くらいだろう。
万が一ボラン(お化け)だったら、上司に押し付けて逃げよう。……いや、あの上司なら、ボランも食っちまうかもしれない(深読み推奨)。
そんなことを考えながら、彼は茂みを注意しながら覗いていった。
暫くの後、彼はラルコッタの元へ戻って来た。
「小動物だったみたいですよ。異常なし」
「全くもってつまらんな」
「ええ、そうです――ね!」
ボグッ
何が起こったのかもわからなかったに違いない。棒で後頭部を殴りつけられ、ラルコッタは声もなく倒れた。
気を失っているのを確認し、彼は茂みの方に向かって手招きする。
「いやあ、スッキリしたわ」
「どうもありがとうございました」
ひょっこりと顔を出したのは、シュナイダーとローザであった。
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