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何がギリギリで合格なのかは見当もつかないが、ローザ殿下は明らかに面白がっているようだった。この方はイマイチよく分からない。
「ごめんなさいね、ロシュ。レイナちゃんはここに寝かせてちょうだい」
「はい」
寝台にゆっくり横たえると、姫がすぐさま寝返りを打った。
背を向けられ安堵と軽い落胆が綯(な)い交ぜで、変な気分だ。
「それじゃ、お休みロシュ」
ローザ殿下はそれだけ言うと、もう用はないとばかりに薄膜を閉めた。
「……お休みなさいませ、ローザ殿下」
一抹の寂しさを感じたものの、オレも定位置に戻る。今はまだ仕事中だということを忘れてはいけない。
それなのに。
『静かだね』
先程の声が浮かんだ。
本当に静かだ。
ローザ殿下を起こさないようにと気を使いながら喋る姫の、小さな吐息混じりの声が耳を離れない。
小さくて、細くて……。
……何だか、色々と自分が駄目な奴だと思い知った夜だった。
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