或る男

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人の借り物だから、いずれは返さなければならないだろうが、今の役はむしろ気に入っている。 スラシュナのザイン・ローグのままだったら一生手に入らなかったもの達。 その時になったら、手放せるだろうか。 ――いずれ来る『その時』が遅ければいいとザインは願う。 「そんじゃまたな、セイム」 ザインは振り返らずに軽く手を振った。 「お気をつけて、ザインさん。いや、…… ……『ルーク・ヤシュカ』さん」 はてさて、どう言って誤魔化すかな。 一応は信用してくれている上司や、友人達を騙すのはちょっとばかり気が咎める。 「……後で全部報告すれば、騙したことにならないよな、うん」 とりあえず帰るか。 自分の職務を全うするためにザイン――ルークはスラシュナを後にした。 end
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