何事もほどほどに

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「マズいっちゅーか……」 超シモの話をしてました。とは誰も言わない。 どうも、綺麗過ぎるシュナイダーの前では、そういった類いの話をしにくいらしい。 しかし、ここで臆して話が変わるようでは意味がない。敢えて空気を読まずにルークが尋ねる。 「隊長殿って、初体験は幾つでしたー?」 「……それがどうした?」 「いやあ、好きな体位とかそんな話をしてたもんだから、隊長殿はどうなのかなーと思いまして」 「なるほど、その類いの話か。私は十七だったな」 「あんまり早くはないっすねー」 「早ければいいというものじゃないだろう? とりあえず私はまだ素面だから、それ以上が聞きたければ、もう少し待つんだな」 シュナイダーが笑ってかわした。 ナチュラルに話したのを見て、全員が認識を変える。あんな綺麗な顔してても、隊長殿も男なんだな、と。失礼な話である。 「んじゃ追加注文を……」 大ジョッキをすぐ飲み干してしまうシュナイダーの飲みっぷりに、また場が盛り上がる。 「隊長殿、相変わらずお強いですね」 ロシュが苦笑した。 花冠祭の最終日、シュナイダーがローザ姫と二人で三十本はあった酒瓶を全て空にしていた記憶は新しい。 「イースとどっちが強いかな」 「悪いが飲み比べはしないぞ。もしも店中の酒が無くなったら、他の客に迷惑がかかる」 「まさかぁ、そんな……」 冗談だと思っている隊員にシュナイダーが笑う。 「いや、一度ライオネルドの奴とやってな、店にあったありとあらゆる種類の酒を飲んで、『申し訳ありませんが、もうお出し出来るものがありません』と店員に追い出されたことがある。あの時は確か二人で百万デュマ近く払った。しかも悪酔いして最悪だったし……。多分今はそこまで飲めんだろうが、やらないにこしたことはない」 「……それ、聞いたことある」 「次の日営業出来なかったってやつか? 隊長殿とライオネルド隊長殿すげー……」 「流石に俺じゃ太刀打ち出来ないな」 イースは苦笑い。 どんだけ武勇伝作ってるんだと、違う意味でルークも苦笑。
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