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「…………て」
「ん……」
「……きて」
「もうちょっと……」
「ロシュ起きて! 遅刻するよ?」
『遅刻』のフレーズに彼は慌てて飛び起きる。だが、全く見覚えのない場所だ。ロシュは目を瞬かせた。
「ここは……」
一体どこだ?
動かない頭で考えていたが、ふと自分の横にいる人物に目を向けた。
目の前いるのは、彼の愛するレイナ……のようだが、何だか雰囲気が違う。少女の雰囲気が消え、傾国の美女もかくやという美しさである。
彼女は微苦笑を浮かべ、ベッドの上のロシュの傍らに腰掛けた。
「もう、またねぼけてるの? ほんとにねぼすけさんなお父さんで困っちゃうねー」
「ねー」
思わず見とれていたロシュだが、レイナ(と思しき人物)と彼女によく似た愛らしい少女の会話に目を丸くして叫んだ。
「お父さん……!? て、誰が!?」
「あなた以外に誰がいるの、ロシュ君? まだ寝てるのかな?」
「お父さんまだねむねむさん?」
首をこてんと傾げた少女の愛くるしい動作につられ、ロシュも表情が緩む。
何だこの可愛い生き物。
……と彼が思ったかは定かではないが、女神の使いの如く可愛らしい子供は、自分の娘らしいとロシュは悟った。
(……レイナに似て良かった)
『息子』ならまだ何とかなっても、『娘』が自分に似たら可哀想過ぎる。
レイナの小さい頃を彷彿とさせる可愛い目鼻立ちを見て、しみじみ思うロシュである。
何だかよくわからないが、レイナと自分は既に結婚しているらしい。しかも……。
「エイミ、ダンお兄ちゃんを起こしてきて」
「はーい。お兄ちゃんもねぼすけさんだから、エイミが起こすのー」
子供が二人いるようだ。
(ダンとエイミって……、父さんと母さんの名前だ……)
推測だが、付けたのはレイナに違いない。
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