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「レイナ、オレ達って結婚して何年目だっけ」
「どうしたの、記念日はあなたの方がよく覚えてるのに」
レイナはくすくすと楽しそうに笑う。
「結婚二年目でダンが生まれて、その三年後にエイミが生まれました。だから、今年で九年目。思い出した?」
「……ああ、うん」
とんと記憶にございません。
生返事になるのも無理はない。ロシュの中では、レイナはまだ十六歳で、清らかなお付き合いのままだ。
それなのに、いろいろすっ飛ばして子供が二人、と言われても全くピンとこない。
だが、愛するレイナは現在とちっとも変わらず、優しくて美しいままだ。きっと自分も幸せなんだろうなとロシュは思った。
「……愛してるよ、『優奈』」
レイナは目を丸くしたあと、頬を染めた。
「……あなたって、いっつも唐突にそーゆーこと言うんだから……。もー……バカっ」
「? 何も変なことは言ってないけど……」
「わかってる! ……ほんとに、いつまで経っても天然王子なんだから……」
レイナの呟きの最後の方は、首を傾げていたロシュには聞こえなかった。
ある意味お約束だが、ダンはロシュのDNAを見事に引き継いでいた。
自分が容姿で苦労した分、どっちもレイナに似たら良かったのにとロシュは思った。
レイナはレイナで、どっちもロシュに似れば良かったのにと思ったことを彼は知らない。
どちらに似たところで、片方の世界でしか美形扱いされないのだが。
エイミに手を引かれながら、ダンが眠そうに食卓につく。こんなとこまで似たのかとロシュは少しダンに申し訳なく思った。
朝食を食べているうちに意識がはっきりしてきたのか、ダンがレイナに話しかけた。
「お母さん、ミレイさんは次、いつ来るんだっけ?」
「花冠祭の頃じゃないかなー。それまでにいっぱい勉強しないとね」
「うん。絶対立派な宝飾職人になるんだ!」
「エイミはねー、お父さんみたいな騎士になるのー!」
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