パラレル・パラレル

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鏡で見た自分の姿は、三十代前半というところだろうか。レイナが結婚して九年目と言っていたので、計算は合う。 何でこんなことになっているのかさっぱり見当が付かなかったが、考えても答えは出ない。 それに、今のところ自分が狼狽えているだけで、誰も困っている人はいない。 以上の点から、ロシュはなるようになれと早々に考えることを放棄した。 「お父さん肩車してー」 「あ、エイミずるい」 「それじゃあ、次はダンに代わろうな」 「うん!」 「お兄ちゃんと交代ばんこー!」 はしゃいでいる二人にロシュは思わず笑みが漏れる。 「お父さんを二人占めしないの、久々のお休みだし、お母さんもお父さんと腕組みたいんだからね」 「エイミもー、エイミもするー!」 悪戯っぽく笑んだレイナがロシュを見上げると、対抗してエイミもロシュの脚にしがみついてきた。 何だろう、幸せ過ぎる。 エイミを肩車し、片手はレイナと繋ぐ。ダンはロシュの服の裾を掴んで、皆で歩く。 レイナが歩くだけで周囲の人々が皆振り返る。が、ロシュと手を繋いでいるのを見ると、不思議そうな顔をしたり、羨ましそうな目で見てくる。 レイナは美人過ぎて困る。 つい口に出てしまったのか、レイナが「また言ってる……」とロシュを肘でつついた。 「いい加減、私が奥さんなのに慣れてよね」 「慣れる日が来るかな……何度見ても惚れ直すのに」 初めてレイナを見た日から、それはずっと変わらない。 ロシュが素直に言うと、レイナは赤くなって俯いてしまった。 「お母さんまっかっかー」 「エイミ、いつものことだから、ほっとこう」 「うん、いつものことー」 子供達は慣れているのか華麗にスルー。 相変わらず、自分が殺し文句を吐いている自覚のないロシュは、内心で首を傾げるのであった。
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