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そして四人で歩いて行ったのは、フォードック家の屋敷だった。
「いつ見ても大きなお家だよねー、シューさんが継ぐのを嫌がったのもしょうがないと思うよね」
「……そうだね」
と言うことは、結局継いだのかとロシュはそっと呟いた。
「でも凄いよね、奥さんをお嫁さんにする為にって主義を曲げちゃうんだから」
「……そ、そっか」
ロシュは、流石隊長殿と妙な感心の仕方をしてしまった。
フォードックの男は、自分で選んだ相手を溺愛し尽くす傾向にある。あのカーネロ(シュナイダーの義父)ですら自分で口説き落とした女性を妻にしたのだから、養子と言えどもフォードックの血が流れているシュナイダーも同じことが言えるだろう。
前に宴席で(勿論ロシュは飲んでいない)そんな話を聞いた覚えがあった。
あんな美形に溺愛されたら、女性は一溜まりもないに違いない。ロシュはそう思ったが、そのせいで、かつて付き合った女性に、『貴方といると私、駄目になる』と言われてシュナイダーがフラれた過去があることを彼は知らない。
「あ、シューさんだ。お久し振りでーす」
シュナイダーは庭にいたらしい。見つけたレイナが気軽に声をかける。
「しゅーさん、しゅーさんー」
「こんにちは、議長閣下」
「やあ、よく来たな。――おいおい、ダン、『議長閣下』はやめてくれといつも言ってるだろう?」
ロシュも何か言わなくてはと思ったのだが、驚愕の方が強すぎて咄嗟に言葉が出てこなかったのである。
(な、何で隊長殿は全然変わってないんだろう?! オレやレイナの歳から考えれば、多分五十手前のはずなのに……!!)
以前と相変わらぬ美貌、体型にも衰えなど少しも感じさせない。
「相変わらずシューさんって年齢不詳だね。何か昔っから若い感じ」
「そうか? 結構体力も衰えてきたし、もう無理は出来んな」
いや、まだまだいけると思います。二人の会話に内心でだけロシュが突っ込みを入れた。
「スタット、お前も元気そうで何よりだ」
「た……隊長殿もお元気そうで……」
しかしシュナイダーは軽く苦笑した。
「こら、今の隊長はお前だろう。いつまでも私を隊長と呼ぶな」
「! そ、うでした……」
ああ、益々混乱。
既にキャパいっぱいいっぱいなロシュであった。
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