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(オレが隊長なんて、なんの冗談だろう……。あれ? ならルークは?)
「そう言えば、ルー君はもうすぐ帰って来るんだよね?」
「ああ、私の所にも連絡が来ていた。予想外の成果を上げたらしいから、来年から地方派遣がなくなるやもしれん」
タイムリーに、レイナとシュナイダーが話題に出した。
それってもしかして。ロシュが思い当たったのは、漆黒の槍から毎年堤の修理や河の氾濫の為に出される人員(主に『副隊長』が行かされる)にルークが抜擢されたのではないかということだった。
自分が隊長なんてものになるくらいだ、ルークが昇進してなければおかしい。
「行く前は散々ごねて、ロシュにこんこんと諭されてたのに、ちゃんと結果は出して帰って来るんだから、ルー君らしいよね」
「本当にな。――ここで立ち話するもなんだ、入っておいで」
「「はーい♪」」
子供達が元気よく返事をした。
「あ、エリーだー!」
「エイミ、久し振り」
「……ダン、こんにちは」
「アリア」
(うわ、隊長殿にそっくり)
艶のある白銀の毛並み、美形の双子に目がちかちかする。
エイミにエリーと呼ばれたのが、件のエリオットなのだろう。エリオットはエイミに、わざわざ手ずから椅子を引いてやっていた。
「どうぞ、お姫様」
「ありがとー」
無邪気な笑みのエイミに、エリオットは微笑み返す。その視線がどうにも年相応ではない、甘ったるい雰囲気を醸し出していて、鈍いロシュでもなんとなく想像がついた。
「……スタット、婚約の件だが、私が言い出した訳ではないんだ。それだけは言っておくぞ」
「……ええ、見てたらわかります」
猫好きが猫を見るような目とでも例えようか、とにかく可愛くてたまらないとエリオットの瞳が雄弁に訴えている。
「まるで、昔のお前達を見ているようだ」
シュナイダーの一言に、ロシュは飲み掛けた茶で噎せた。
「う……ゲホッ、ゴホッ……っ」
「二人でいるとあんな感じだったな」
「シューさんだって人のこと言えないでしょ。奥さんといる時のシューさんだって、あんな感じだったよ?」
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