Je te veux

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いつになく強い口調の殿下。あまりにも珍しすぎて、ちょっと怯んだのがほんの少し悔しい。ので、思いきりふんぞり反って腕を組む。 「殿下がそこまでおっしゃるのなら、受けてたちましょう。で、どこのご令嬢なんです?」 「受けてたつって、お前な……。まあいい、私が結婚しようと思っている相手は、今私の目の前にいる」 どこに? ここには私と殿下しかいない。どこかに隠れているのかと首を巡らして見たが、やはり見当たらない。 「……あ、もしかして、愚かな者にしか見えないとかいうあれですか。残念ながら私は愚かにはなれませんので……」 「残念なのはお前の頭だ」 殿下が深々と溜め息をついた。失礼な。私の頭の何が残念だと言うのか。 「残念なのは殿下のほうでしょう。貴方の前には私しかいませんよ。それだと、私が殿下の結婚相手ということになってしまうじゃありませんか」 「だーかーらー、お前だ、お前! お前で合ってる!」 「…………………………は?」 イマナントオッシャイマシタカ? 「……申し訳ありません、今私の耳が変になっていたようで……、もう一度お願いします」 「――もう一度だけ言うぞ。私の正妃になってくれないか? 自分でも本当にそれでいいのか疑問に思わなくもないんだが……」 「……何ですか、それ。随分酷い言い様ですね……」 仮にも求婚しようという相手に言う言葉じゃないだろう。……次の台詞がなければ。 「でも、私はお前でないと駄目な気がする。嫌でなければ受け入れてほしい」 夢じゃないだろうか。試しに殿下の頬をつねったら、思いきりつねり返された。どうやら夢じゃないらしい。 ……泣きそうなくらい嬉しい。 しかし、表情が顔に出にくい(と人に言われる)私は、殿下に不安げな顔で「……駄目なのか?」と問われた。 嫌でなければ? 駄目なのか? そんなわけがあるかっ! こっちは十五の時からこの日を夢見てたんだ! 今の私なら、かの『鬼神のリュカ』だって倒せる! という気分だ。 「勿論、答えは是です。私の中に『殿下の求婚を断る』などという選択肢は存在しません」 そう言うと、殿下も嬉しそうな顔になった。 「……さて、これから面倒臭いことになりますね」 特にルノー殿下とか、ルノー殿下とか、王とか、妾妃のレジアーナ様とか。面倒にも程がある。ルノー殿下は既婚者なんだから、私のことなんかほっとけばいいのに。
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