Je te veux

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王妃様は、アゼルがあまりにもアレだったため、特に何も言わなさそうだし、妾妃の鼻が明かせるから、文句どころか祝福してくれそうだ。 まあそれだけでなく、いろんなしがらみが多い私を嫁にしようというのだ、殿下の覚悟はかなりのものなのだろう。 殿下は苦い顔で笑った。 「……そこら辺は、追々何とかする。一年を目処に全てを片付けるから、待ってくれるか?」 「高々一年、待てますよ、今更です」 一生来ないと思っていた日だ。たった一年待つくらいどうってことな……いや、あった。一年待ったら、私は子持ちになっている。 「……こんな時に恐縮ですが、ややこしい話がもう一つ」 「なんだ」 「私、殿下の子供を身籠っています」 「……え?」 「ですから、貴方は父親になるんですよ」 「――はぁ!?」 顎が外れそうなくらい殿下が驚いている。 「……い、いつもの笑えない冗談、とかじゃ、ないよな?」 「いくら私でも、こんなことを冗談では言いませんよ。不謹慎じゃないですか」 まったく、殿下は私を何だと思ってるんだか。 殿下は一つ咳払いをすると、すぐさま眦を吊り上げた。 「何でそんな大事なことをすぐ教えない!?」 「えー? 世間一般の男性は、自分と結婚もしてない女性が自分の子を妊娠すると迷惑でしょう?」 「迷惑なわけがあるか馬鹿者! 私をそんな世間一般の甲斐性なしと一緒にするな! お前がもう少し、その、私が抱き上げられる大きさなら、そうしてやったと思うくらい嬉しいぞ……?」 非力でスマンと恥ずかしそうに殿下が謝った。ええ、わかっています。私が一般的な身長でないばかりに……非常に残念だ。 「でも、アゼルが生きてても、同じことを言えましたか?」 意地悪な質問だということは重々承知の上で尋ねてみる。とても大事なことだから。 殿下は一瞬言葉に詰まり、ほんの少しの間を置いてから口を開いた。 「……正直に言うが、もし生きてたら……難しかったかもしれない。でも、これだけは誓う。子供ができたことを喜ばないということはなかった……と思う」 本当に正直である。こういう時に嘘をつけない殿下だから好きなのだけれど。 けれども。 「嘘でもいいから、そんなことはないとか言えないんですか? 気が利きませんね」 「う、煩いな! 私がこういう性格だとよく知ってるだろうが!」
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