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オレの友人は少し変わっている。
性格的な物もそうだが、それ以外にも不思議に思う時がある。
「……剣ってよー、何でこう勝手にどっか行くんだ?」
「……行かないぞ、普通」
オレの友人――ルークは、剣を持つと剣術を習い始めた子ども並みに変な動きをし始める。
「何で素振りがちゃんと出来ないんだ」
「うー……何か、重くて、すっぽ抜けちまいそうで……」
「実際にすっぽ抜けたな、さっき」
模擬戦用の剣がルークの手から抜けて飛んで行ったのを見た時、一体何の冗談かと思った。しかし、本人は至って真面目に、「あれ? どこ行った?」と探していたため、オレはどう反応したらいいか非常に困った。
「何かダメなんだよなー、もっと小さいと何とかなるのに……」
ルークがぼやく。
「剣が扱えないのに、小刀はいけるって?」
「おう。俺、的当て得意だぞ」
実際に投擲をやってもらったのだが、見事にど真ん中に命中した。十回やって十回命中だ。この時ばかりは素直に感心した。
羨ましくなるくらい器用な奴なのに、剣だけは本当に駄目なのが不思議で仕方がない。
剣の習得だけは特例として免除されているルークだ(隊長殿ですら匙を投げた)。これで体術が人並みだったら、絶対騎士団に入れなかったに違いない。
ルークが言う。
「俺が剣を扱えないのは、お前が不器用なのと同じくらいどうしようもねーよ」
「そうか、なら仕方無いな……とでも言うと思うか?」
一緒にしないでもらいたい。オレはそんなに酷くはない……はずだ。
ルークは早耳だ。
「そういや、明日は書物庫の大掃除やるんだってよー。俺ら、かり出されるかもしれねーなー」
「そんなこと、誰も言ってなかったぞ?」
「そうだけど、もうちょっとしたら隊長殿からお達しがあるかもだな」
半信半疑でいると、詰め所へ戻る途中で出会した隊長殿から
「明日に書物庫の清掃を行うそうだから人員を回してくれと言われてな、お前達に頼みたいんだが」
と言われた。
「ほら、な?」
言った通りだろと、ルークがオレに肩を竦めてみせる。
「何だ、知っていたのか。まったく、一体どこから聞いてくるのやら……」
同感です、隊長殿。
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