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私はマリアサリア・ラル・ロシュナンド。十八才。
まだ結婚はしていない。
嫁き遅れ?
いいえ! 他の王家との兼ね合いもあって、王族の結婚年齢は庶民と比べてちょっと高くなるだけよ!
私だってレイナに比べると落ちるかもしれないけど……比べたら駄目ね、あの子は別格だもの……それなりに美人だって言われるのよ。
だから、それなりに選べるのよ。……決められたお見合いでもね!
……しょうがないじゃない、王族の宿命なんだから。自由恋愛なんて、夢のまた夢だわ。
だけど、いくら運命の人だからって、スタット……? だっけ? レイナの婚約者。
あれはちょっといただけない。
あんな子どもが泣くような顔の、ーー性格はいいみたいだけど……、剣術しか取り柄がなくて、ーーフォードック卿の右腕級……、……悔しいけど認めるわ、顔以外は悪い者じゃない。
でも、運命の人を見つけたレイナが羨ましいとか別に思ってない。思ってないんだから!
五月の半ば。少し暑くなりかけた頃のこと。
ピジェッテ大陸のマルチェド王家はこの世界で唯一女王が治める国。したがって、王子と言えど王位継承権はほぼないに等しい。
私にそんな国の王子との見合い話が持ち上がったのだ。
ピジェッテとはあまり親交がないから、出来ればまとまってくれればいいなというお祖父様の心の声が聞こえたような気がしたけど、気に入らなければお断りさせて頂くわ。
「サリア様、もうすぐマルチェドの若君がお着きになります」
「……ああ、ええ、そうね」
落ち着かない。……別に若君が来るからってわけじゃなくて、気になっているのは窓の外。
もうかれこれ半刻は木の上で鳴いてるのよ、子リャムが。降りられないみたいなのに、何故誰も助けてあげないの?
「姫様、そろそろご準備を……」
ああもうダメ、我慢できそうにない。
「私、ちょっと庭を散歩してくるわ。着いたら呼んで頂戴」
「……畏まりました」
侍女は、また私のワガママが始まったと思ったことだろう。
ええ、そうよ、リャムが鳴いてるのがどうしても気になるの! ワガママを言われたくなかったら、誰か気付いて助けなさいよ!
とは言え……私、木になんて登れないし、登ったこともなかったんだったわ……。
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