3540人が本棚に入れています
本棚に追加
「儂らがおっても話が進まんじゃろうから」とお祖父様や皆が部屋を退出していく。
二人っきりにしないでと叫んでしまいそうになったが、そんなはしたないことはできない。
そうだわ、ロシュナンドの貴族の誰かと喋ってると思えばそれほど緊張しないはず!
「貴方は人の見分けがつかないとお聞きしましたが、私が……美人に見えたから結婚したいということですか?」
何とか普通に喋ることに成功した。普通と言っても高飛車に言っているように聞こえるだろう(去年散々レイナに言われた)から、印象は最悪でしょうけど。
「それは違うかな」
しかしそんなことを気にも介さず、王子は座っている私の横に腰かけた。
あら? 何だか近いわ?
「リャムのために一生懸命だった君が可愛いと思った。そうしたら、君が認識できるようになったんだ」
王子にそっと手を握られた。
「サリア姫、僕を好きになって下さいませんか」
これ、もしかして、本なんかに書いてある、『口説く』って行動……なの?
私を、口説いてる?
「……あの、手を……、手を……離して」
「答えを聞かせてくれたら離してもいいよ」
動揺と混乱と羞恥が一気に襲ってきて……私の限界を一気に突破した。
「だっ、だからっ、別に一生懸命じゃないしっ、あのリャムが木の上で鳴いてたのが哀れだっただけでっ! 私は助けようとか思ってなかったんだからっ! あのリャムだって今頃はお湯をひっかけられた後、紐かなんかを首に結ばれてるわよ!」
「お風呂で洗ってあげて首輪をつけるってことだよね。飼ってあげることにしたんだね」
「そ、そんなんじゃないわ! あんな小さな生き物に死なれでもしたら、夢見が悪くなるから! 保護してやるだけよ!」
「餌をやって、名前をつけて、可愛がってやるの?」
「そうよ! って、ちがっ……」
「僕もリャムは好きだよ」
何を言っても笑顔の彼。
「そういう素直じゃないとこ、すごく可愛いよ」
「か、かわっ!?」
素直じゃないとこが!?
最初のコメントを投稿しよう!