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「ちょっ……ワタル、今ズルしたでしょ?」
手の中のカードを凝視しながらサトがそう言ったので、ワタルは片目を細めた。
「んあ? ばっか、してねえよ」
「嘘、嘘。だって今、絶対直前でジョーカー入れ替えた」
「替えてねえから……」
口端をひくつかせ、ワタルは無理矢理に笑ってみせた。
笑顔というより、苦笑に近い。
理不尽な言われようにも耐える、大人な彼。
ちなみに高校1年生。
「えー?」
唇を歪め、あからさまに疑いの眼差しのサト。
彼は納得いかなそうに、カードの位置を何度も入れ替えたりしている。
いいから、ほら、引かせろ、とワタルはサトの手札に手を伸ばす。
すると、引き抜こうとしたトランプの背の柄が、ワタルの目の前からふっと消えた。
「────……サートー」
長い付き合いのため、サトのすることなどワタルには大体わかる。
なので、目の前から忽然と消えたサトの手札が、ワタルに背を向けてしまったサトの手の中に隠されていることくらいお見通しなのだ。
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