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「この表紙から想像するに、おそらくこのビデオは、普段は男を踏みつけ、罵倒しているドSクイーンが、手足を拘束されてあれやこれや──という話に違いない」
「は、はあ……」
「いつもは強気で、勝ち気で、高慢で、自己中で、男なんて金ヅルかカスくらいにしか思っていないような女王様が、手足の自由を奪われて、客のM男にあんなコトやこんなコトを……」
「…………」
サトは、口を半開きにしたままワタルの口頭に聞き入っている。
「ドキドキ」という心音が聞こえてきそうだ。
「『あっ! 何をするの! やめなさい!』『男を馬鹿にしやがって! 思い知らせてやる!』『いや! やめなさい! やめて!』」
「わ、わわっ……」
顔を赤らめて、けれどサトは話の腰を折ろうとはしない。
ワタルも、自分の口から語られる怪しげな情事の情景を想像して、頬をポッと染めた。
──アホらしい……。
男とはなんてくだらないものだ──、と自分を現実に引き戻す理性は、今の彼らには存在しない。
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