はじまるとこ

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 公園の真ん中に鳩の死体が落ちている。 男はそこに通り掛かると鳩の死体を思いっきり踏み付けた。パキポキと骨の折れる音がして、既に硬くなっていた鳩の死体は地面に広がるように潰れた。   足の裏に蛍が駆け回るような、鳩の潰れる感触に、男は爽快感と不快感を同時に感じた。  男は鳩を蹴り飛ばし、公園の隅にある畦のような土の淵に落とした。鳩の目は黒く、ただひたすらに公園の遊具を睨み付けていた。 八月の真昼、陽炎を敷き詰めた公園の遊具には子ども達の姿は見えない。    男の名は継広、那覇の公園に住むホームレスだ。年齢は今年で48になる。中学校を卒業後土方として働くが、酒癖の悪さと生来の怠け癖が祟り、20を過ぎる頃には何処に行っても土方としての仕事が貰えない鼻つまみ者になっていた。
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