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「あたし、ハイヒールが欲しい」
その言葉に、俺は耳を疑った。
彼女はスニーカー好きで、踵の高いヒールなんて履いた所を見たことがない。
そして彼女の靴箱には、かなりの年代物から最新モデルまで様々なスニーカーが並んでいるのを見せて貰ったことがある。
靴には困ってない筈の彼女から、予想外の誕生日プレゼントのリクエストに、俺はもう一度聞き返した。
「本当に良いの?前は新しいスニーカー欲しいって言ってなかった?」
「なによ、あたしはスニーカー以外履いちゃいけないわけ?」
機嫌を損ねてしまったのか、彼女は少し紅茶を飲んでから話し始めた。
「……釣り合うようにしたかったの。あたし、いつも女っぽくない格好してるから」
確かに、彼女の服装はスニーカーに合う様にボーイッシュな服が多かった。
けれど、スカートを着ていることもあり、俺自身はさほど気にしてはいない。
こんなに彼女が気にしていたとは、まったく知らなかった。
「まさかそんなに気にしてるなんて思ってなかった」
「なにその反応、人がずっと悩んでたことを」
「ごめんごめん。…サイズは前と変わってない?」
「…そうだけど。もしかして、買ってくれるの?」
「…まだ検討中」
俺のことで悩む彼女が可愛くて。
つい虐めたくなる時もある。
けれど、きっと贈るよ。
君に似合う赤いヒールを。
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