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『今から一分以内に、貴方が叶えたいことを願いなさい。 さもなければ、貴方に災いが降りかかります。』
平凡な毎日を送っていた俺へ届いた一通の手紙。
最初はただの悪戯かと手紙をごみ箱行きにすることも考えたが、俺には至急叶えたい願いがある。
「願うだけなら自由だよな。」
俺は、一縷の期待を込めて願ってみることにした。
『どうか俺の無くした指輪が戻って来ますように』
そう俺は、彼女との一年記念日の一週間前、プレゼントのシルバーリングを無くしてしまったのだ。
散々探し回って手に入れた入手困難なリングでまた買うことなんて、金銭的にも無理な話。
そして彼女とのデートまで残り一時間の今、この手紙が悪戯でも縋りたい程の気持ちだった。
手紙を開封してから約一分。
やはり悪戯かと若干肩を落としながらも、俺は支度をして待ち合わせ場所へと向かう。
待ち合わせ場所に向かうと、彼女が嬉しそうに俺を迎えた。
その笑顔が俺の一言で曇ることになるのは、やはり見たくないと思ってしまう。
「あ、これ…ありがとね。」
彼女が見せたのは、左手にはめられた指輪。
それは確かに彼女の欲しがっていたシルバーリングだった。
これは手紙の魔法なのか、そうじゃないかは分からないけれど。
この奇跡に感謝しよう。
幸福を呼ぶ手紙の魔法に。
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