11人が本棚に入れています
本棚に追加
『これは貴方への気持ちです。受け取って下さい。』
今日は彼との一年記念日。
服を選びメイクを念入りにして、待ち合わせ場所に向かおうとした時。
ドアノブに白い紙袋が掛かっていた。
紙袋の中身はシルバーリングと手紙。
そして手紙の内容がこれ。
シルバーリングの方は、前々から彼に記念日に贈って貰おうとおねだりしていたブランド物。
最初は彼からのサプライズだと心が踊った。
けれど次の言葉で、それが彼じゃないと分かった。
『追伸 これは彼が書いたのではありません。彼は貴方の為に指輪を買いましたが、無くしてしまったのです。それを私が拾い、貴方へ届けました。どうか彼にはこのことを言わないで下さい。そして彼を幸せにしてあげて下さい。』
長い長い追伸は、彼への愛情と彼の幸せを願う言葉だった。
彼には四年前に夢を追う為海外に行く彼女と別れていた。
彼は遠距離でも良いからと別れを拒んだが、彼女はそれを拒んで海外へ。
そして彼は、私と出会うまで、彼女のことを引きずっていた。
そして現在、彼女は海外で成功し夢を叶え将来有望なピアニストとして注目されている。
彼の話によると、今はコンサートツアーで日本にいるらしい。
今だに連絡を取り合っているのをみると、少し嫉妬する時もあった。
でも彼は私を大切にしてくれたから、今まで何も言わなかった。
これで分かった。
彼女は彼が今でも好きなのだ。
けれど彼には本当の想いを伝えずにいる。
手紙を鞄にしまうと、紙袋を持って待ち合わせ場所へ向かった。
いつも私が待ってるから、今日は待たせたかったけど。
やはり待ち合わせ場所に早く着いてしまった。
「ごめん、待った?」
彼は時間5分前にやってきた。
そんな彼に私は首を振る。
「ううん、今来たとこ。」
彼女の願いが彼の幸せなら
彼の幸せが私の笑顔なら
私は彼を笑顔で迎えてあげる。
左手に君の指輪をはめて。
今日は君との一年記念日。
幸せで忘れられない日。
最初のコメントを投稿しよう!