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見つけた。
こんな偶然があるのだろうか。
世の中に人溢れる中で、理想の男性に出会える人なんて何人居るだろう。
いや、見つけようとして簡単に見つかるようなものではない。
レンズ越しの憂いを帯びた目線。
掛ける時の仕種。
眼鏡フェチの私にとって、まさに理想通りの人。
けれど数時間前、彼の幼なじみの恋人として紹介されてしまった。
始まりは、入院中の母の為に寄った花屋。
そこで出会った店員の黒斗くんと仲良くなり、この計画にも乗った。
桐谷翼は、大学で知らない人はほとんど居ない有名人。
彼に出会う前の印象は、天才を鼻にかけたエセナルシストと最悪なもの。
最初はその高い鼻をへし折られた姿が見たくて参加したつもりだった。
けれど会った彼は、今までの印象とは真逆。
とても真面目で裏表なんてまったく無い人。
そのギャップも手伝って、私は不覚にも僅か数秒で恋に落ちてしまった。
22歳、遅れてきた初恋。
けれど彼に全てを話せば、黒斗くんを裏切ることになる。
言いたい、でも言えない。
そんな葛藤に私は苛まれていた。
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