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日常。
まだ登校するには大分早い時間に、東条 明里は委員会の打ち合わせで急いでいた。
肩まで伸びた髪を揺らしながら、勝気そうな瞳をやや不安気に染めて、小走りで走っていた。
「最低っ! 」
朝の通学路に、相応しくない怒鳴り声と、頬を叩く痛烈な音が響いた。
辺りには人が居なかった分、明里の目に止まってしまった。
「何か言えないの!?」
興奮して怒鳴る女に対して、男の方は殴られた方を向いたまま動かない。返事もしない。
「……ムカつく」
バンッと鞄で男の横腹を叩き、女は通学路を戻って行く。
清楚なセーラー服の、気の強そうな女の人だった。
明里はソッと男の横をすり抜け様としたが、しっかりと腕を掴まれた。
「酷いや! 痛手を負った俺を無視するなんて!」
「昨日の彼女とは違う子だね」
私が満面の笑みでそう言うと、男は「見られてたんだ…」と小さく呻いた。
「もう同じ学校の女の子は手を出し尽くしたのかしら、柊?」
柊、と呼ばれた男は少し苦笑いして明里を見た。
「同じ学校で彼女作ったら、その子が苛められるやん。
モテる男は本当に辛いや~」
イテテ、と叩かれた頬を擦る柊。
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