非日常。

1/6
前へ
/112ページ
次へ

 非日常。

「やっぱ亜美は愛人志望かな」 ストレートの長い髪を、指に絡ませながらサラリと言った。 長い髪はやや茶色、小柄で目が大きく可愛らしい声。 小さな体よりやや大きいセーターを着て、袖から少しだけ手を覗かせ、 首を傾げ上目遣いで柊を見た。 それは、 朝早くに、柊の言った通り音楽室に居た亜美に、運命ってあるんだと、からかっていた時だった。 「いきなりどーしたんすか? 」 「だって亜美、防御型だもーん、ね?」 音楽室の机に座っていた柊に近づき、腕の袖を引っ張った。 「朝から会いたいって言ったから女の子に殴られてまで来たのに、何?」 柊は戸惑いを見せつつも、苦笑し亜美を覗き込む。 「あー、また亜美を理由に女から逃げて来たんだぁ」 おっとりとした喋り方、語尾を伸ばして甘えた口調。 おまけに可愛らしい容姿。 大抵の男は亜美と話す時、亜美に釣られて優しい口調になる。 柊以外は、だが。 「どーせ本気になれないんだから止めておけばいいのにー」 よいしょ、と柊の隣に座り柊の瞳を覗き込む。 「柊も亜美と同じ、愛人志望になっちゃうしかないよ~」 チョンと柊の鼻の頭を触り、可愛らしく笑った。 「いきなり素っ頓狂な事言わないでよ、一応俺よりお姉さんなんだし」
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

142人が本棚に入れています
本棚に追加