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「あの俺、本当に何も知らないですし、何も協力出来ないと思います」
「言ったろう? 僕は君のため息が欲しいんだよ、能登叶助くん」
「だから、ため息って――」
ふと、息吹楓のコトバに叶助は疑問を抱く。
何故、名乗ってもいないのに名前を?
相手は一応、探偵だ。調べあげることくらい出来たろう。
しかし、何故叶助の事を調べる必要があった?
接触する前から調べていた、ということはだ。
「最初から、俺を?」
「ああ。狙っていた、と言ったらあまり良い印象ではないかな。君に決めていたんだ」
今更印象などどうでもいい。
どう転んでも怪しいという印象は覆らないのだから。
「感性力異能者とは、人の感性、精神、つまり心の一部を力に変える異能力者のことでね。僕ら感性力異能者探偵は、そういった力を持ち、なお何の組織にも属さない所謂野良者を見つけて確保するのが仕事なんだよ」
と、いきなりそんな電波的なトンデモ話を聞かされても、叶助には何のこっちゃである。
しかし息吹楓は至って大まじめだった。
「感性力異能者は、自身から発生する感性力より、他人からの感性力を使う事が多い」
「な、何故?」
何故は自分だ。何故訊ねてしまった。
どうせ聞いても理解出来ないだろうと言うのに。
「その方が、強い力を得れるんだよ。それも何故と聞かれると困るが、そういうものだから、としか答えられない。例外はあるけどね」
「まさかとは思うけど、俺にその力が……?」
「感性力異能? いや、そこまで調べきってはいないが、無いだろうね。それとも何か予兆が?」
「いや……」
もしかしたら、などと思っただけだ。
頭では怪しいと理解していても、そういったファンタジックな話に憧れた時期もあったわけで、その頃の感情が少し覗いただけだった。
しかし現実ってのは厳しく、否定されてしまった。
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