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「しかしね、先程言ったように、感性力異能者は他人の感性を必要とする場合が多い。それは、誰でもいいというわけではないんだ」
そこまでくれば、何となくわかってきた。
彼が叶助を調べ、そして接触してきた理由が。
「適合因子、とでも言うのかな。君にはそれがある」
信じられない。
自分にそんなものがあるなんて感じたことはないし、しかも話を聞くとそれじゃまるでただ利用されるだけの存在だ。
ファンタジックであっても主役ではない。わざわざ主役になりたいとも思わないが、あまりにお粗末な配役だ。
「とても付き合いきれませんよ」
呆れて、思わずため息をついた。
――その時だった。
まるで、吐いた先から吸い込まれるような感覚。
口から出た息はすぐに大気に拡散した筈なのに、そこに留まりそして吸収されていく。
その行方は、息吹楓の右手。
目に見えないはずの『ため息』が、確かにそこに集まるのを叶助は目撃した。
青白い光が、息吹楓の手の中で放電するように輝いている。
感性力異能者――彼が、そう。マインダーとやららしい。
「信じてくれたかい?」
これを見て、何を疑えと?
今の叶助は大掛かりな手品を見たって魔法だと信じそうなくらい、混乱していた。
そんな彼の意識を引き戻したのは、よく澄んだ声だった。
「待ちなさい、ド悪党!」
植え込みの中から颯爽と登場したのは、――いや、颯爽ではない。枝に裾が引っ掛かって丁寧にそれを解いてから登場したのは、こともあろうかクラスメートで今や叶助の宿敵ともいえる人物、
言葉殊美、その人だった。
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