第ニ章

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   よりによって何てものを、という表情をしているのは笑名先輩だった。  ホラー系はあまり得意じゃないらしい。  しかし、女子二人組はと言えば、 「いいんじゃない。ちょうどいい時間だし」 「そうね。私は能登くんが決めたのでいいわ」  などと、不満はない様子である。  ちなみに叶助はどちらかと言えば得意ではない。  不甲斐ない男二人組を置いて、笆乃と言葉は足取りすら軽くチケット売り場に向かっていく。 「観念するか」  笑名先輩がそう言って苦笑したので、叶助もチケット売り場へと向かった。  何より、考えずに選んだ自分が悪いのだから。 「何か買ってく? ポップコーンとか」  言葉が訊ねる。  内容もわからない映画だが、スプラッタ系ホラーだったら、食べ物は遠慮したい。  タイトルから察するには、血くらいは出そうだが。  などと叶助が迷っている間に、叶助はポップコーンを、笑名先輩はジュースを買わされていた。 「まあ、いいんだけどね」  間もなく上映開始というところで四人は席についた。  席順は左側から、笆乃、言葉、叶助、笑名先輩の順で座る。これは言葉の悪質な邪魔ではなく、単純に男女に別れた流れをそのまま引き継いだ形だった。  内容はそこそこ怖いものだが、それよりどんなシーンでも微動だにしない女子二人の方が不気味だった。  時折揺れる叶助の右隣りの先輩の方がまだ可愛いげがある。  しかし、それでいて女子二人はそれなりに満足した様子だった。  上映が終わった後は仲良く販売グッズを眺めている。 「ところでキョウスケ」  やや離れたところで笆乃達の様子を眺めながら、笑名先輩が訊ねる。 「この集まりはいったい何なんだ?」  笑名先輩は、どうやら自分の存在意義に疑問を感じているらしい。  しかし、それを説明するのはえらく面倒だったので叶助は短く答える。 「流れです」 「えらく急流だな」 「男女四人で映画なんて学生らしくていいじゃないですか」 「ま、お前がいいならいいんだけどさ。映画は、まあ、正直アレだったけど」  やがて女子二人が戻ってきたのでその話はそれ以上続かなかった。  
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