第ニ章

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   笑名先輩に恋人がいるのは初耳だったが、そんなことはもはや些細なことだった。  何だか一気に力が抜けてしまい、ため息なんぞをついてしまう。 「結構、本気で驚いてくれたんだ?」 「そりゃ――」  そうだろう。  叶助が何度も笆乃に告白しようとしていたのは、笆乃自身よく知っているはずだ。  そんな人物から好きな人がどうとかいう話をされて動揺しないはずがない。 「何だか嬉しいな」  そう言って、笆乃は屈託の無い笑顔を向ける。 「あ、そう、ですか?」  何だか悪い雰囲気ではない。  このまま勢いのまま告白してしまうのも有りだろうか。  言葉は笑名先輩の執拗な攻撃に耐えている。  チャンスだ。  向こうがわざわざ邪魔しにきたのだから、その隙をついて告白するのは許されるはずだ。  叶助の中で勝手な方程式が出来上がる。  言えるだろか――。  頭の中で、シンプルなコトバを反芻する。  言おう――。 「――笆乃」  叶助は口を開き、  そして、それ以上に目を見開いた。  ――最悪だ。  立ち止まった彼らの目の前には、ダークスーツに身を固めた明らかに胡散臭い連中が、胡散臭い光を手品のように瞬かせながら立っていた。    感性力異能者――マインダー。  そんなコトバが頭を掠めた瞬間、何かが動きはじめるのを感じた。  それは、空気とか場の流れとか、そんなものだったかもしれないし、衝動とか感情でもあった。  しかし、集約すれば、結局そこにいた人間の行動だった。  最初に動いたのは言葉だった――いや、実際にはそこにいた人間全員が同時に動いたのかもしれない。  叶助が最初に視線を向けたのが言葉だっただけだ。  そして、やはり言葉も最初に叶助を見たようで、叶助の方に駆け寄ろうとしていた。  そして、入れ替わるように叶助の傍らの影が動いた。 「えっ?」  笆乃の長い髪が視界に映る。  少女が二人、交差した。  互いに目も合わさずに。  叶助はいつの間にか、言葉から笆乃に視線を向けていた。 「笆――」  そして、笆乃が笑名先輩の傍らに立った時に、ようやく視線が絡む。  しかし笆乃は、叶助が自分を見ている事を確認するようにだけ一瞥しただけたで、そのまま笑名先輩に顔を両手でとり、  そのまま、キスをした。  この状況で。  叶助が見ていることを知った上で。  
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