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颯爽、というコトバを使うにはややぐだぐだな様子で少女は現れた。いや、窓から飛び降りるまでは良かったのだが、その後の間が何とも拍子抜けを誘う。
ともあれ、目の端に涙を溜めながら、少女は宣言したのだった。
――その告白、待った。
所謂、『ちょっと待ったコール』というやつだろうか。
普通は、同じ相手を想う男子が告白に待ったをかけて参上するものである。
しかし、現れたのはどうみても女子だった。
変則的な予想は出来るが、それより本人に訊ねた方が早い。
そう判断して行動に移したのは笆乃だった。
「どうしたの、コトちゃん?」
言葉殊美――コトノハ コトミ。通称、コトちゃん。
容姿やや端麗、成績普通の一般美少女で、ついでに叶助と笆乃のクラスメートだった。
笆乃はともかく、叶助はあまり会話したことが無かったし、告白を邪魔される程恨みを買っていたとは思えない。
しかし、言葉は何も語らずに呆然と立ち尽くす彼の腕をとると、
「じゃ、悪いけど」
そう笆乃に告げて歩き出した。
当然、叶助は移動する気がなかったので、言葉は腕を伸ばした状態で静止を余儀なくされる。
「ちょっと、歩きなさいよ」
「いや、待ってくれよ。えっと……言葉さん?」
「何かしら?」
「いったい、何の真似?」
笆乃も戸惑いを隠せない様子で、言葉の様子を眺めていた。
二人の視線を一身に受け、やれやれと言った様子で言葉は彼の腕を離した。
「だからね、能登が今しようとしてた告――」
「わあ! 待て待て!」
慌てて叶助が言葉の口を抑える。
とてつもなく今更なことだが、自分が告白しようとしていたと、改めて言われるのは憚れる。
何せ、その相手は目の前にまだいるのだから。
「コトバを選べ」
「あー、つまり“それ”をちょっと待って欲しいと言ったの」
それは聞こえていた。その台詞は空からも降ってきたし、彼女が着地した後にもまた聞いた。
しかし訊いているのは、その理由だ。
「コトちゃん、能登くんの事が好きなの?」
笆乃が訊ねる。
「はん、まさか」
鼻で笑われてしまった。
「アンタらがめでたくイチャイチャなさろうが、知ったことではないけど、今は待ってと言ってるの」
「だから何故?」
「内緒」
言葉は人差し指を口にあててそう言った。
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