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叶助は混乱していた。
何が起こっているのかわからない。
怪しい連中が現れ、そいつらが危険であると判断したのは正しかっただろう。
実際にまだ何かをされたわけじゃないが、突然同じような格好をした連中が何人も現れ、何度か見たような超常的な光を発しているのだから、理由が何であれ普通じゃない。
だから、同じような力を持つ言葉に視線を向けた。
どうすればいい――といういう意味で。
笑名先輩でも良かったが、やはり先にその能力を知った言葉を見てしまった。
そして言葉もそれに応えるように叶助に駆け寄った。
しかし、その後だ。
何が起こった?
叶助の傍らにいた、この場で最も一般人である笆乃が、言葉と入れ替わるように駆け出したのだ。
そして、笑名先輩に駆け寄って、
――キスをした。
何故?
今この状況で、何故?
いや、この状況じゃなくてもだ。
笆乃にとって笑名先輩は何なんだ?
姉の彼氏?
じゃあ、何故キスをした?
笆乃にとって、叶助の存在は?
頭の中にたくさんの疑問符が飛び交う。
そして、それらが終着していくのは――哀しみという感情だった。
今の状況に構うことなく、その感情は目から零れ落ちる。
その一滴は、何を濡らすこともなく光となって消える。
笆乃の手の中に。
「ありがと。能登くん」
まるで止まっていた時間が動きだしたように、ダークスーツの男達がそれぞれの光を別の形に変えて襲ってきた。
それらは炎や雷のように形のないものもあれば、武器のような物体もある。
どれもが、人に危害を加えるには充分なシロモノのように思えた。
「殺すなよ。“丁重に自由を奪え”」
連中のリーダーだろうか。
唯一、光を発していない男がそう言った。
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