第三章

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  「問題は別の集団なんだ」 「何だかややこしそうね」  面倒臭そうに言葉が呟く。 「ああ。とてもややこしい。彼らは集団でありながら組織ではない。指導者はいないが目的を同じとしている」 「なによそれ」 「つまり、野良でありながら徒党を組んだ集団だ」  叶助と言葉はいまいち理解が出来ずに顔を見合わす。 「つまり?」 「一から説明しよう。我々が何故野良の異能者を確保しようとするか。それは、言うまでもない、危険だからだ」 「あんただって充分危険じゃない」  初対面で攻撃された恨みはまだ忘れたわけではない。 「それはすまないと思っている。だが、君は僕を退ける力を持っていた。にもかかわらず無所属だ」 「それの何が悪いのよ」 「感性力異能者の力は、とても強力だ。故に無秩序であってはならない。命令し、抑圧する指導者が必要なんだ。無論、上に立つ者は悪であってはならないが」 「政治論かしら」 「宗教論だろ」 「一般論だよ。もっとも、感性力異能自体、一般的ではないが」 「何でもいいけど。それで?」  言葉はお菓子に手を伸ばしながら、興味なさそうに話の続きを促す。 「悪意を持った組織でも、統制が取れているのならまだいい。交渉もできる。だが、野良でありながら集団である彼らに統制はない。正直、手を焼いている」 「そりゃご愁傷様ねぇ」  クッキーをかじりながら、言葉は鼻で笑う。  だが、叶助はそこまで悪態をつけなかった。何かが引っ掛かる。この話がどこにいきつくのかが、朧げに想像出来そうなのだ。  目的がありながら、自由な集団。  ――悪いけど、“俺たち”は好きにやらせてもらう。  ふと誰かのコトバが脳裏に浮かんだ。  そこには、目の前の息吹楓もいて―― 「まさか、笑名先輩が……」 「それと、『クライ』もだ」  クッキーの砕ける音が小さく響いた。 「ねえ、まさか、二人と戦えとか言わないでしょうね?」 「そういう状況になれば」 「バッカじゃないの?」  言葉は冷たく言い放つ。 「あんたに協力するくらいなら、あの二人の側につくわよ。それに、話を聞くとは言ったけど協力するとは言ってない」  
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