31人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、ここにきて簡単に諦める息吹楓ではなかった。
「協力してくれるのならば、君達にはもう接触しないと誓うよ」
「それ協力しなかったら一生付き纏うってこと? そんなの脅迫じゃない」
同じような脅迫を、叶助は言葉から受けたことがあったが、それは今言うべきではないと判断した。
「行くわよ、能登。あんた、『ブレス』。今度来たら、さっき程度じゃすまないわよ」
そう言って言葉は、叶助の腕を引いて去っていく。
息吹楓は追って来なかった。
「心配しなくていいからね、能登。あいつが来ても、ちゃんとアンタも守ってあげるから」
階段を降りながら、言葉がそう言った。
「もちろん、他の誰が来ても」
その代わり、燃料代として言葉に『告白』を提供しなければならない。
それと、もう一つ。何か条件のようなものがあった気がしたが、今は思い出せなかった。
「ねえ、能登」
しばらく歩いたところで言葉の手が離れる。
まっすぐと叶助を見据え、瞳を動かさない。
「あんた、どうするの?」
突然訊ねられて、叶助は首を傾げる。
「何が」
「……どうするの?」
立ち止まり、同じ質問をぶつけられた。
具体的なことは言わなかったが、言葉が何を訊ねているのかは、何となく理解した。
「……そうだな。さっきのって、アレは“力”が必要だったから……多分、俺の涙が必要だったからああしたんだと思う」
それは、笆乃と笑名先輩のことだった。
「だって、そういう状況だっただろ?」
「そうね。それで? だから、どうするの?」
「どうもしないよ。しようとしていた告白をするだけだ」
「そっか……」
空気が抜けるような小さな声で、言葉は呟いた。
「笑名先輩だって、あれは笆乃が無理矢理――」
「でも彼女いるんでしょ」
最初のコメントを投稿しよう!