第三章

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   しかし、ここにきて簡単に諦める息吹楓ではなかった。 「協力してくれるのならば、君達にはもう接触しないと誓うよ」 「それ協力しなかったら一生付き纏うってこと? そんなの脅迫じゃない」  同じような脅迫を、叶助は言葉から受けたことがあったが、それは今言うべきではないと判断した。 「行くわよ、能登。あんた、『ブレス』。今度来たら、さっき程度じゃすまないわよ」  そう言って言葉は、叶助の腕を引いて去っていく。  息吹楓は追って来なかった。 「心配しなくていいからね、能登。あいつが来ても、ちゃんとアンタも守ってあげるから」  階段を降りながら、言葉がそう言った。 「もちろん、他の誰が来ても」  その代わり、燃料代として言葉に『告白』を提供しなければならない。  それと、もう一つ。何か条件のようなものがあった気がしたが、今は思い出せなかった。 「ねえ、能登」  しばらく歩いたところで言葉の手が離れる。  まっすぐと叶助を見据え、瞳を動かさない。 「あんた、どうするの?」  突然訊ねられて、叶助は首を傾げる。 「何が」 「……どうするの?」  立ち止まり、同じ質問をぶつけられた。  具体的なことは言わなかったが、言葉が何を訊ねているのかは、何となく理解した。 「……そうだな。さっきのって、アレは“力”が必要だったから……多分、俺の涙が必要だったからああしたんだと思う」  それは、笆乃と笑名先輩のことだった。 「だって、そういう状況だっただろ?」 「そうね。それで? だから、どうするの?」 「どうもしないよ。しようとしていた告白をするだけだ」 「そっか……」  空気が抜けるような小さな声で、言葉は呟いた。 「笑名先輩だって、あれは笆乃が無理矢理――」 「でも彼女いるんでしょ」  
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