31人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも、それじゃあ何故、笆乃に告白することを俺に促すんだ？ まだ足りていないんだろ？」
「だって、今しなかったら、あんたもうしないでしょ？」
わからない。
だがそうかもしれない、と叶助は思った。
今まで通り笆乃と接するのすら難しいかもしれない。
だが、“告白”という明確な理由があれば、接触も出来る。
多分、何もせずただ避けつづけるよりは、結果はどうあれ告白してすっきりした方が叶助にとって良い方向に進むような気がした。
きっと言葉はだから告白を勧めてくれたのだろう。
「だったら、せめてお前の『力』になるように、すぐ近くにいろよ」
「あんた、バカ？ 他の女連れて告白する奴がどこにいるのよ」
「じゃあ、隠れてでもさ」
しかし言葉は苦笑して頑なに首を振った。
「能登、べつにあたしはさ、あんたの告白に全て賭けてたつもりじゃないのよ。ただ、愛の告白って結構大きな『力』になるから、狙ってたの。でも、どのみちそれだけじゃ足りないし、使わなければ『力』は勝手に消費されていくのよ……別に目的そのものを諦めるんじゃない、“あんたを見逃してあげる”のよ」
それが、言葉の最終結論だった。
もう何も言わずにその場を去る。
叶助がその場で立ち尽くしていることにも、気づいているのか、いないのか、振り向きさえせずに、やがてその後ろ姿さえ見えなくなった。
最初のコメントを投稿しよう！