第三章

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         /2  月曜日。  笆乃は学校に来ていなかった。  叶助が登校した時にはすでに言葉の姿があった。  少しだけ安堵してから、笆乃の姿を探したが、その時点では見つからなかった。 「この前も、結構遅く来たじゃない」  言葉がそう言った。  デートに誘われたあの日も、笆乃の登校はギリギリだった。今日もそうかもしれない。 「仮に休みだとしても、チャンスは今日だけじゃないでしょ」  すっかり応援側のような口ぶりで言葉は言う。  だが、もし本当に欠席だとしたら少し心配だった。 「昨日の戦闘で何かあったんじゃないよな……」  叶助は独り言のように呟く。  そもそも、あの得体の知れない連中と、笑名先輩・笆乃では数で負けている。勝つ方が難しい。  上手く逃げることが出来てればいいのだが。 「あ……」  言葉の声とともに、チャイムが鳴り響いた。  笆乃の席は空いたまま。  後に担任からの知らせで、とうとう欠席であることが確定してしまった。 「大丈夫よ、能登。あんたが持つ――というか、与える『力』って、意外と大きいもの。実際に使ったあたしが言うんだから間違いないわ」  その叶助の哀しみから力を生み出した笆乃が負けるはずない。  まるで励ますように言葉はそう言った。実際、励ましてくれているのかもしれない。  それはまるで、連日の行動を償うようでもあった。 「笑名先輩に会えればわかるんだがな――」  言って、叶助は後悔する。  今の言葉の前で、その名を出すべきではなかった、と。  しかし言葉は動揺も見せずに頷いた。 「そうね。もしかしたら、向こうから来るかもよ」 「……そうだな。そうじゃなくても、俺が様子を見に行ってみるよ」 「うん」  もしかしたら、言葉は無理して普通を装っているのかもしれない。  けれど、そのことを言葉に言うのはあまりに無神経だろう。  だから叶助も、普通でいることを心掛けようと思った。  
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