第三章

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   休み時間になり、言葉が言った通り、笑名先輩は自ら叶助を訪ねて来た。 「キョウスケ、ちょいといいか?」  いつもの笑顔。  しかし、叶助はその笑顔に安堵は出来なかった。  この後にするであろう話は、きっと日常的な会話ではないはずだから。 「場所を移しますか」 「だな。……コトミちゃんは?」 「言葉は、とりあえず保留で」 「そっか。ま、キョウスケがいればいいか。ハノもいないようだし」 「ああ、そういえば彼女、今日は欠席なんですけど何か知りませんか」 「怪我はない。休んでるのは気持ちの問題じゃないか? その話も含めて」  行こうぜ、と笑名先輩は歩き始めた。  それに続いて、叶助も廊下を歩く。  笑名先輩が選んだ場所は、屋上だった。教室からは遠い場所だが、喧騒から離れた場所の方が話はしやすい。 「さて、キョウスケ。何から話すか。感性力異能者――マインダーについては、知ってるんだもんな?」 「一応、少しは」 「コトミちゃんは? 彼女も知ってるのか?」 「言葉は……感性力異能者です」  笑名先輩は笑顔を引っ込めて、目を見開く。  どうやら、そのことは気づいていなかったらしい。 「そうか……なるほど。だから」  笑名先輩は何かを納得したように、一人頷く。 「キョウスケ、お前彼女に俺が異能者だってこと、言ったろ?」 「……すみません」  笑名先輩は呆れたように大きな溜め息をついた。  やはり、本人の許可なくそのことを漏らすべきではなかっただろうか。 「あのな、キョウスケ。別にばらすのはいい。けど、多分お前も、コトミちゃんも、ついでに多分ハノも、勘違いしている」 「勘違い?」 「コトミちゃんとハノは、多分俺が『ラフ』だと知っていたから、俺の前では笑わなかったんだ」  自分意外の異能者に力を与えた場合、異能の力を失うという制約があるのだ。  だから、二人は『笑顔』を力とする笑名先輩に対しては無表情か仏頂面でいた。 「多分、その通りだと思いますよ」  
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