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叶助は男のコトバを反芻する。
――ため息が欲しい。
いったいどういった意味なのだろう。
直接ため息をあげることなんで出来ないから、比喩だろうか。
例えば、実は駆け出しのカメラマンでそういった画が撮りたいと、そういう意味か。
それとも、実はどこかの教授で何かの統計をとっているとか。
しかし、そのどちらでもないことがすぐにわかった。
「失礼、僕はこういう者だ」
言って名刺が差し出される。
叶助はそれを声に出して読んだ。
「……探偵、イブキ、カエデ?」
「うまく読み飛ばしたね」
その小さな紙には、『感性力異能者探偵社 息吹 楓』と記されていた。
叶助が読み飛ばしたのは、感性力異能者と書かれた部分だ。
読み方がわからなかったわけではなく、何となく、読まない方がいいと思ったからである。
「感性力異能者――マインダーと読むんだよ」
訊ねてもいないのにその男――息吹楓はそう言った。
感性力異能者――マインダー。
聞いたことのないコトバだった。
「探偵、と言っても一般的な興信業務は行ってないけどね」
怪しい。
いや、そんなことは最初から感じていたが、ここにきて叶助は男から沸々と沸き上がるような怪しさを感じはじめていた。
「探偵って、そんな簡単に素性を明かすものですか?」
「さあ? 一般的な探偵のことは良く知らないからねぇ」
息吹楓は肩を竦めてそう答えた。
どうしても自分が一般的ではないと強調したいらしい。
「あの、俺急いでるんで――」
「では手短に話そう」
立ち去ろうとしたが、それも素早く阻まれる。
「反応から察するに、感性力異能者というコトバを聞いたの初めてかな?」
「……ええ。それが?」
「言ってしまえば、一種の超能力者の事だ」
ヤバイ。
こいつはヤバイ。
探偵はまだしも超能力などと平気で口にする奴がまともなわけがない。
それともこれも比喩表現?
いや、だとしても関わりたくはなかった。
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