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偶然、聞いてしまった好きな人の電話。
「優輝には好きな人居るんでしょ。」
少し怒っているようででも冷静な声。
「麻由の事好きって事?…………。多分て…麻由はどうしたいの。…………。俺に決めろって事?そんなの俺のとこにいろって言うに決まってるじゃん。俺は麻由の事好きなんだから。」
淡々と和孝はストレートな言葉を言う。
恥ずかしくないのかな…。誰か来るかもしれない階段で。
そんな事より、真剣なんだ…。
彼女が居るのは感付いていたけど決定的なことを目の当たりにすると、やっぱり悲しい。
和孝とは何回か飲み会で一緒になっただけで実際何も知らない。
構内で会ったら話すだけ。
けど、何だか好きだって思った。空気が凄いいい奴だから。
一緒に居れたらって、少し夢見てた。
「香織さん?」
男の人の声。
外のベンチで膝を抱え、顔を伏せていた。
人は通るけど、私なんて誰も気にしない。はずだったのに。
頭の上で名前を呼ばれて縮こまる。
「香織、さんだよね。泣いてんの?大丈夫?」
相手はしゃがんで私を覗き込む。
相手の顔が見えた。
私に何かイヤな火が点いた。
麻由が和孝より好きな優輝を私が奪ったら…。
和孝を見返すことが出来るかな…私を見てくれるかな。
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