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「…兄貴。ここはもういいから。行ってやってくれ。」
「光宏…しかし…」
「あの日…寿子が言っていただろう?もう責任を感じないでくれって。じゃないと逝くに逝けないって。
奥さんに言ってくれ。もう寿子の事で責任を感じなくていいって。」
「すまない…光宏。…すまないみんな…」
少しの荷物を抱え、兄貴も家を去った。
俺以外の残された者達は、怪訝な表情を浮かべていたが…
…あの時の事は…
別に話すつもりもない。
あれが夢だったのか、幻だったのか…
それとも真実だったのか…
…どうでもいい事だ。
あの出来事のお陰で…
俺は今、こうしていられる。
がんばって、寿子に恥ずかしくない生活を送ろうと…
心配させない生活を送ろうと思えている。
…見てろよ?寿子。
俺だって、本気になれば…
料理だってお前以上かも知れないぞ?
いつも仏前に上げてやるから…
俺の料理の上達ぶり…
嫉妬しないで感じろよ?
END
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