Ⅰ-1

3/10
前へ
/235ページ
次へ
「借金なんか作って…」 『借金…?』 流星は幼くても"借金"という言葉くらいは知っている 「しょうがなかったんだよ」 いつもは強い父親の威厳が少しも見られなかった 「でも、私に相談してくれても…よかったじゃない」 いつも笑顔の母親が泣いている 「どうせ反対するだろ?」 『お父さんと、お母さん、喧嘩してるの?』 「するわよ!借金作るくらいなら私も働きます」 瑞穂の声は強かった 「お前には流星がいただろ」 「流星はもう一年生だし、しっかりしてるから…大丈夫なはずよ」 『僕は…』 「…だからだよ」 『え?』 「しっかりしてるけど…まだ一年生なのよ?7歳なのよ?」 『僕、しっかりしてないよ…しっかりしてるふりをしてるだけだよ?』 「流星なら…大丈夫だ」 「……だから、あなたはどうするつもりなの?流星を。」 「……言えない」 剛は瑞穂から目をそらした 『僕、どうかされるの?』 「なんで…?」 「お前が…反対するからだ」 『お母さんが反対するようなこと…?』 流星の心臓は早く鼓動し始めた 完全に体が動かなくなった
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

452人が本棚に入れています
本棚に追加