Ⅰ-1

4/10
前へ
/235ページ
次へ
「もういいわよ…またあなたの好きにすればいい!」 瑞穂は怒ってクッションを剛に投げつけた 剛はそれを大人しく受けた 避けもしなかった 「流星は…俺に任せてくれ」 剛はそれだけ呟いて流星の方へ向かってきた 瑞穂はソファーに倒れ込み、泣き始めた 『やばい、父さんがくる…』 流星は急いで自分の部屋に戻った そしてランドセルに手を伸ばし、漢字のドリルを取り出した 剛の足音がだんだん流星の部屋に近づいてきた 『ドリルをやってたフリをしよう…』 「……流星?」 剛が流星の部屋のドアを開けた 流星は机に向かって一生懸命ドリルをしていた 「…なに?」 「勉強してたのか、偉いな」 「うん」 剛は大きな手で流星の頭を優しく撫でた 「流星…」 「ん?」 「今から父さんとドライブに行かないか?」 流星の心臓は大きく鼓動した 「どこに行くの?すぐに帰ってくる?」 流星は悪い予感がした 家を出てはいけない気がした 剛は少し考えて 「行ってからのお楽しみだ。すぐ帰ってくるよ」 と、笑顔で言った 流星は剛の笑顔に安心した 「じゃあ、行く」 「じゃあ、暖かくしないとな」 剛はクローゼットから暖かいコート、マフラー、手袋そして毛糸の帽子を取り出し、流星に着せた 今は11月。 外は寒い。 でもこんなに厚着をさせるのは不自然だった
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

452人が本棚に入れています
本棚に追加