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そして剛は何故かリュックサックに流星の衣類を詰め込み、「お小遣い入れておくな」と言って外ポケットに五千円札を入れた
「やったぁ」
7歳の流星にとって五千円は大金で、それを貰えただけでうれしく、リュックサックに衣類を詰め込んだことを不審に思わなかった
「これを持って行きなさい」
剛は流星に衣類を詰めたリュックサックを渡した
流星は五千円の入ったリュックサックを嬉しそうに背負い、剛と手をつないで外に出た
「車に乗りなさい」
いつもなら瑞穂が座っているために座れない助手席。
今日はそこは流星の席。
流星はうれしくてはしゃいだ
「シートベルトしめなさい」
剛の言うとおりにした
初めての助手席は初めての景色だった
「よし、行こう」
剛と流星を乗せた車は発車し始めた
「待って!」
瑞穂の声が聞こえた
「流星を連れて行かないで!」
瑞穂の声に構わず車を進ませる剛
「お母さん…?」
瑞穂は泣いていた
でも流星は涙の理由がわからなかった
車を追う瑞穂
「お父さん、お母さんが…」
「…見るな」
「なんで…?」
「言うとおりにしなさい」
「……はい」
剛が怖くて従うしかなかった
流星はミラーから瑞穂の姿を確認した
だんだん遠くなる瑞穂の姿
流星はこれが最後に見る母親の姿だとは知らずに見えなくなるまで見ていた
「お母さんも来たいんじゃないかな」
「じゃあ、家に帰ったら謝ろうな」
「うん」
剛はさっきの怖い父親とは逆の優しい父親になっては
流星は安心した
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