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「うぐっ…うぐっ…」
流星は一生懸命涙を手で拭い、その男の顔を見ようとした
「俺の顔、見えてる?」
男は流星の涙を大きな指で拭き取ってくれた
「うっ…みえ…る」
流星がそう言うと男は笑って見せた
「お前、名前は?」
「…りゅ…せ…」
「りゅうせい?」
流星は頷いた
「かっこいい名前じゃねぇか。俺は竜也(タツヤ)だ。流星、男なら泣くんじゃねぇぞ。」
竜也は流星の隣に座り、流星の頭を優しく撫でた
「お父…さ…ん」
流星は剛が自分の頭を撫でてくれたときのことを思い出した
『偉いな、流星は。』
あの時の大きく、温かかった手を思い出していた
「俺はお前の父親じゃねぇぞ、俺はまだ23歳だ」
竜也は笑いながらそう言った
「ははっ…」
気づけば流星の涙は乾いていた
「やっと笑ったな。お前、俺ん家来るか?」
突然の言葉に流星は驚いた
瑞穂からよく聞かされていた言葉を思い出した
「『知らない人にはついて行ったらいけません』ってお母さんが…」
流星はそこまで言って自分が捨てられたかもしれないという事実を思い出した
「お母さんに怒られるの?」
竜也が聞くと流星はゆっくり首を横に振った
「それに、俺が"竜也"ってこと、知ってるじゃねぇか。"知らない人"じゃねぇよ」
竜也は笑って見せた
竜也の笑顔を見て流星も笑った
「どうする?来るか?」
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