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そう、ゼスタは今、仕事&父親から逃走劇を展開している。
仕事は機械の整備で、特に無茶苦茶やりたくない!って訳ではない。
理由は唯なんとなく。
ちょっとばかし面倒臭いなと思ったのもある。
だがあくまでもなんとなくなのだ。
我侭な方ではないし、逆に素直に話を聞くほうが多いのだけど。
敢えて言い訳をするなら、誰かが自分を呼んでいる…。
そんな感じがするのかもしれない。
非科学的なのは、あんまり信用していないのだが。
今日に限ってふらっと外に出て行きたいと考えた、というのが正解なのかもしれない。
これが、常人には理解出来ない壊れた電器。
理由が全然定まっていない。
父親にガミガミ怒られるのは、火を見るより明らかなのに。
別にゼスタは、父親の事が嫌いではなかった。
寧ろ逆方向である。
母親がゼスタを産んで、直ぐ亡くなってしまったので、男手一つで育ててくれた恩もある。
ずっといるからでもあるし。
絶対的に信用していたし、自然体として、父親の事が好きだった。
現実に戻ると、眼前のおじさんはまだ喋り続けている。
顔がさっきより近づいていた。
もう、全く耳が貝だった。
ふとゼスタの脳裏に、おじさんの多弁が父親を導くかもしれないと不安がよぎった。
ゼスタは適当に相槌を打って、スピーカーからどうにか抜け出そうと試みた。
決死の努力の賜物で、どうにか成功。
ゼスタは魂が抜けるような溜息を付いた。
なんら変わりの無い日常生活。そんな平坦な日常に辟易していたが、同時に満足をしていた。この日常はゼスタにとってぬるま湯の温泉なのだ。
そして再び早足で歩き出した。
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