一章 邂逅と発途

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そう、ゼスタは今、仕事&父親から逃走劇を展開している。 仕事は機械の整備で、特に無茶苦茶やりたくない!って訳ではない。 理由は唯なんとなく。 ちょっとばかし面倒臭いなと思ったのもある。 だがあくまでもなんとなくなのだ。 我侭な方ではないし、逆に素直に話を聞くほうが多いのだけど。 敢えて言い訳をするなら、誰かが自分を呼んでいる…。 そんな感じがするのかもしれない。 非科学的なのは、あんまり信用していないのだが。 今日に限ってふらっと外に出て行きたいと考えた、というのが正解なのかもしれない。 これが、常人には理解出来ない壊れた電器。 理由が全然定まっていない。 父親にガミガミ怒られるのは、火を見るより明らかなのに。 別にゼスタは、父親の事が嫌いではなかった。 寧ろ逆方向である。 母親がゼスタを産んで、直ぐ亡くなってしまったので、男手一つで育ててくれた恩もある。 ずっといるからでもあるし。 絶対的に信用していたし、自然体として、父親の事が好きだった。 現実に戻ると、眼前のおじさんはまだ喋り続けている。 顔がさっきより近づいていた。 もう、全く耳が貝だった。 ふとゼスタの脳裏に、おじさんの多弁が父親を導くかもしれないと不安がよぎった。 ゼスタは適当に相槌を打って、スピーカーからどうにか抜け出そうと試みた。 決死の努力の賜物で、どうにか成功。 ゼスタは魂が抜けるような溜息を付いた。 なんら変わりの無い日常生活。そんな平坦な日常に辟易していたが、同時に満足をしていた。この日常はゼスタにとってぬるま湯の温泉なのだ。 そして再び早足で歩き出した。
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