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「あはは・・・何を根拠に」
おどけたような表情を崩さず千速は首を傾げる。
「・・・・そうだな」
駿は顎に指を当てしばし考え、答えを導き出す。
「千速は確かに女の肩を持つが、俺の弟だ。知らない人間にそこまでむきになるとは思えん。女の話をしていたときのお前の表情から推測するに、俺より先にその女を知っていると思ったんだが・・・なんだ隠す気か?」
拷問して聞き出してやろうか?
松原駿。
もうすぐ手が届く目的のために手段を選ぶような男ではない。
少し考え諦めるように千速は溜息をつき眼鏡を外して、かまわぬ模様の手拭でレンズを拭きながらぶつぶつと呟くように口を開いた。
「確かに・・・心当たりが無いわけじゃありゃしませんが・・・泣かしたら不二緒ちゃんも永兄ぃにも嫌われやすから、肝に銘じといてくださいっ」
厭々ながらも千速が教えてくれた女侍と思われる人物の住まいは、神田にある小さな道場であった。
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