花 嵐

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「貴様っ!」 残りのひとりは投げ捨てるように女を放し、刀を掴んだ。 女は素早く胸元を掻き合わせ、血を流して倒れる父上に駆け寄った。 それを目の端で捕らえながら、侍を相手に駿は構える。 弟達が鉄扇と手之内で、駿の武器は分銅鎖。 二尺ほどの鎖の両端に四角柱の分銅がついた武器だ。 気合いと共に斬りかかる侍の太刀先をかわし、分銅を小手に打ち込む。 手首が砕けた侍は呻きながら刀を落とした。 びゅん、と、手首を返して侍の首に鎖を巻きつけ、すり抜けるように背後に回り一気に絞めあげる。 「下衆が」 八大地獄の焔熱のように激しく、八寒地獄の極寒のように冷ややかさで、意識を失った男を見下ろす駿だった。
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