21人が本棚に入れています
本棚に追加
「貴様っ!」
残りのひとりは投げ捨てるように女を放し、刀を掴んだ。
女は素早く胸元を掻き合わせ、血を流して倒れる父上に駆け寄った。
それを目の端で捕らえながら、侍を相手に駿は構える。
弟達が鉄扇と手之内で、駿の武器は分銅鎖。
二尺ほどの鎖の両端に四角柱の分銅がついた武器だ。
気合いと共に斬りかかる侍の太刀先をかわし、分銅を小手に打ち込む。
手首が砕けた侍は呻きながら刀を落とした。
びゅん、と、手首を返して侍の首に鎖を巻きつけ、すり抜けるように背後に回り一気に絞めあげる。
「下衆が」
八大地獄の焔熱のように激しく、八寒地獄の極寒のように冷ややかさで、意識を失った男を見下ろす駿だった。
最初のコメントを投稿しよう!